注意力散漫

印刷機 仕事
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 新しいパートで、発送する教材に訂正箇所があるとのことで、配布資料を追加することになった。
私の他、古株パート2名と臨時の大学生男子バイトの4人でその作業を任された。
営業事務パートという採用だけれど、こんな作業的なこともするのだ。
リソグラフという機器を使い、大量印刷をするのだけれど。この機器を使うのは初めてで、古株さんに作業工程を聞いた。

「リソ、初めてなんですね。じゃあ、田中く~ん、芝生さんに教えてあげてくれない?」

「はーい。」

 メガネをかけた学生バイト、子と同世代だ。私の息子でもおかしくない年齢だけれど、職場の中では教えていただく立場だ。

「ちょっと、待って下さい!メモ、取って来ていいですか?」

「え?メモなくても、難しいことじゃないんで・・大丈夫ですよ。」

 それは、私がメモをわざわざデスクまで取りに行く時間、彼は待たされるのがだるいー的な台詞に変換され、なので私は彼の言う通り、その手順を頭の中にインプットすることにするけれど、いつもの悪い癖で、やはり頭がぼーっとし始め、段々ともう一人の自分が違うところに意識を持って行きたがる。古株パート2人の会話ばっかり耳に入ってしまうのだ。

「でさ、うちの息子、ほんとにササミと卵とプロテインなんだよね。毎日毎日さ。ダンナも最近は影響受けて、筋トレし始めて~」

「いいじゃん、逆に。だって、ご飯作りしなくて済むし。自分の食べたいもんだけ作ればいいんでしょ?気楽じゃーん。」

ー息子さんがいるのか・・しかも筋トレにはまってるのか。ご飯作りが億劫な最近、確かに羨ましい・・


「で、ここをこうして・・あとは同じことを繰り返すだけっす。」

 我に返ると、説明は終わっていた。
まずい!ちゃんと聞けてなかった。

「田中くんは筋トレとかするの~?」

「筋トレっつーか、ジョギングとバスケは週末してますよ。」

「そうなんだー。確かに、いい体してるよね~」


 おばさんらしく、彼の引き締まった腕をポンポン叩く。田中君は、満更でもない顔をしていた。3人は雑談をしながらも、せっせと手を動かす。私はリソグラフの機器の前で、必死に作業手順を思い出そうとするが途中から分からなくなってしまう。
デスクに戻り、メモとペンを持ってくる。田中君から説明を受けて覚えている部分を書き出す。そしてやっぱり無理だともう一度聞きに行く。

「すみません、ちょっと分からない部分があって。ここから先、もう一度いいですか?」

「あー、はいはい。じゃあ、ちょっと一度やってみてもらえますか?」

「はい。」

 彼と彼女ら3人の前で、操作をする。注目を浴びているという事実でどうもあがってしまい、ぎこちない動きになる。メモを見ながら、途中までー

「あ。そうじゃないっすね。」

 すぐに駄目出し。田中君は、だが飄々と操作をする。苛々もせず、だが必要以上に愛想良くもなく。何を考えているのか、ちょっと掴みにくい人だ。

「メモ、いいですか?」

「あー、じゃあ、ゆっくりやりますんで。あ、スマホありますか?動画、撮ったらいいんじゃないっすか?」

「いいんですか!?」

「はい、いいっすよ。」


 パート2人が、こちらを見てなんだかヒソヒソしている気がしたけれど、有難い提案に乗ることにした。デスクに戻り、バッグからスマホを取り出し、再び戻ろうとドアの前へー


「田中君って、優しいよね~」

「っていうか、動画まで撮る必要ある?」

「え?でもあの人、メモを取ろうとしてたし。さすがに非効率でしょ。」

「そんな難しいことでもないのにねー」

「いつまで続くかな~?」


 ドアの前で立ちすくむ。顔がかぁっと熱くなり、その場を離れる。数分して、深呼吸。余計なことを考えるのはやめようー意識的に無になる努力をし、再び戻る。

「お待たせしました!」

 わざと、ドアの前で声を張る。私は今ここにいますよ!と彼らに示す。部屋に入ると、彼らは何でもないような顔をして、作業を続けていた。ちらっとパートの一人と目が合ったが、逸らされた。

「じゃあ、いいっすか?」

「はい、お願いします。」

 彼はまた、説明しながら操作を始める。録画ボタンを押し、画面越しにその手順を頭に入れる。だが、すぐに雑念に支配される。私っていつもこうだ。どこへ行ってもーというとは、私に問題があるのだろう。再び、パート2人の会話が耳に入って来る。だが今度は大丈夫。動画を見ながら操作すればいいのだ。そして気付く。こういうところが駄目なのかもしれないと。


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