これまでのパートではサクッと終わっていた入社手続き。
だが、今回採用してくれた会社はきっちりしているのか、膨大な書類が渡された。
人事担当が丁寧に説明をしてくれて、ホワイト企業なのだと思う。
頑張ってねばって腐らなくて良かった。
入社書類色々
自宅に戻り、受け取ったクリアファイルの中身を出すと、記入したり押印したりしなくてはならない書類がわんさか。
誓約書や身元保証書、それに通勤経路や給与振り込み届。
残念ながら、銀行が指定されているので新たに口座を作りに行かなくてはならない。
これまでのパートで使っていた銀行口座で引き継ぎたかったのに、色々と面倒だ。
また、住民票の提出。
年金手帳や雇用保険被保険者証の提出。
それに、前職の源泉徴収票だ。そういえば受け取っていないことに気付き、何とも言えない気持ちになる。
気まずい退職をしたし、もう二度と関わることなどないと思っていた前職場にコンタクトを取るのは非常に勇気が要る。
しかし、これも試練の一つ。
やっと希望の仕事に就くことが出来たのだから、四の五の言わず行動しなくては。
身元保証人
夫は私が今回パートを決めたタイミングが気に入らないようで、誓約書の中の「身元保証人」に名前と押印するのも勿体ぶった。
「これさ、あなたが字を変えて書けばいいじゃん。俺、今忙しいんだよ。」
そりゃあ、家族なんだし。
同じ印鑑を使っているのだし。
でも、それってどうなんだろう?
私が真面目過ぎるのかもしれないけれど、今の夫の立場ー、会社経営をしている人間の言う台詞ではないだろう。
本当に、自分にメリットが及ばないことについては乱暴なのだ。
それでも、私がじっと夫の作業が終わるまで背後で息を鎮めて待っていると、面倒臭そうに用紙を受け取りサインしてくれた。
これで、夫の了承は得たーと思っていいだろう。
なんだかんだで私にも罪悪感があったのは事実。
「迷惑かけてごめんね。パートだし、そっちの仕事をあくまで優先させるから。」
「もういいって。こっちはどうにかなるから。」
すっかりへそを曲げた夫は、自営の手伝いを私に任せることを諦めたのか、それとも内心では私があまりにも使えないから困っていたのか?
何となくお払い箱のような対応をされた気がした。
通勤経路
通勤手当が出ないのに、提出する意味があるのだろうか?
ホワイトと言っておきながら、この部分には正直もやっとしてしまう。
この、自宅から会社までの経路を図で説明するのが私は独身の頃から苦手。
そもそも地図が読めない人間なのに、それを他人に分かるように描くのは至難の業。
それでも下書きをし、何度も推敲しながら一時間弱掛けて完成した。
ちょっとした作品を仕上げたような達成感。
職場へは、電車を使わないと厳しい距離だが、自転車で片道50分程度と通えない距離ではない。
その分、時給がまあまあ高いので、晴れた日は自転車ー雨の日は地下鉄を使いながらうまくやっていこうと思う。
取り敢えず、交通費が云々の前に仕事を覚えることが第一だけれど。
前職の源泉徴収票
2月に退職した工場パートからは、特に源泉徴収票を貰っていないまま。
ちゃんとした職場なら、退職から1か月もすれば郵送されて来たりするという。
こちらからお願いしないと貰えないなんてー
気が重いので、一杯サワーを飲んで景気づけ。
ほろ酔いになってきたところで電話した。
「もしもし、私、今年の2月に退職した芝生ですが、源泉徴収票をいただきたいのですが。」
「あぁ、ちょっと待って。総務に変わるから。」
声の感じで工場長だと分かる。
いくら以前の従業員だからといって、もう社外の人間なのに。こんな電話対応がありえない。
社員教育がしっかりなされていない証拠だ。
ピロピロと留守電のメロディが流れ、途中でブツリと切れたら女性の声。
「もしもし、お電話代わりました。源泉徴収票の件ですよね。どちらに送付いたしますか?ご自宅の住所など変わりはありませんか?」
「はい、以前のままです。」
「承知しました。では本日、郵送いたします。」
なんてことはない。
あっけなく源泉徴収票を取り寄せることが出来た。
しかし、一気に過去に引き戻される。不思議なもので、あの工場独特の匂いが受話器から漂って来た。
あり得ないことだけれど、人の記憶は嗅覚が優れているーと実感した。
一点の危惧
採用が決まり、浮かれているばかりでもない。
入社手続きの際、人事担当がさらりと笑顔で言った一言が忘れられない。
「まぁ、ご主人のお仕事手伝ってらしたら、ちょっとここの仕事は物足りないかもしれませんよ。」
どういうことなのか。
私が高く見積もられているということなのか?
自営の手伝いーということで、もしかしたら吉田さんレベルの能力を持っているとでも!?
まだ何とも言えないけれど、途端に不安に陥った。
それとも本当に簡単過ぎる仕事なのか?
だとしたら、そっちの方がいい。
単純作業でいいのだ。
だって、この職場ではバイトは私一人なのだから。
社員レベルの仕事を任せられても困る。
「芝生さんの他にも、応募者は結構いたのですが。やっぱり時間の融通がなかなか利かない方ばかりで。」
時期の業務量によっては、勤務時間が増えたり減ったりと一定ではないということは面接の時に聞いた。
それを知って辞退した人もいるらしい。
私は子持ちといっても、高校生の親だし融通が利く。
そういった点も採用されやすかったのだろう。
少々、心に引っ掛かりはありつつも、いよいよ来週。
初日はどうか晴れますように。