針金さんが、お裾分けと言って桃を持って来た。
何か月ぶりだろうか?こうして彼女が我が家のチャイムを鳴らすのは。
そして、きっと何か頼み事があるのだろうとの予想は的中。
自治会の祭りで綿菓子の屋台の人員が足りていないらしく、その手伝いのお願いだった。
「娘さん、今年もどうかな?」
私ではなく、娘にお願いしたいらしい。
だがその日はバイトだった気がするし、もう頼まれても引き受けないと言っていたことを思い出し、やんわりと断った。
「じゃあ・・ご主人は?」
その日、夫は休みだ。
だが子ども関係は勿論、自治会であっても夫は手伝ったことなどない。仕事以外の雑務は妻の仕事だと思っているし、頼めるわけがない。
「夫は仕事で・・」
「そう・・じゃあ、あなた、お願い出来ない?」
なんだか釈然としない。第三希望ってことか。そしてこの日は特に予定がないのだが、手伝う気になれない。
「一応、今年から謝礼金が出ます。」
「そうですか・・」
「5000円出ます。」
え?
謝礼金が5000円!?てっきり多く見積もって500円のクオカードかと思っていた。そんな私の心の動揺を見透かすかのように彼女は畳みかける。
「お手伝いは、3時間くらいだと思う。割のいいバイトだと思ってお願い出来ない?」
「はい!・・あ、でもちょっと時間帯によっては厳しいかも・・何時の枠ですか?」
おいしい話に飛び付きそうになったものの、金で動く奴だと思われるのが恥ずかしく、咄嗟にもったいつけるようなポーズを取る。時間帯を聞き、
「あー、多分、大丈夫。」
全然大丈夫なのに、ほっとしたように答える。
針金さんも同じくほっとしたように笑顔になる。
「じゃあ、詳しい段取りなどは後ほどラインしますね。ありがとう、よろしくお願いします。」
玄関を閉め、ガッツポーズ。
おいしすぎる。ポスティング3日分、なんなら事務パートの午前出勤より多い稼ぎ。
今の私にとって5000円は大きい。PTAでも自治会でも、謝礼というよりバイト料としたらうまく回るのではないだろうか。
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